祈ろう、明日を@湖月わたる大劇場千秋楽・その4
2006年9月22日 星組だらだらと、星組楽の続き。前楽と大楽、サヨナラショーの話を。
……需要もないのに書くのが、ジュンタ・クオリティ。
前楽のサヨナラショーの前に、じゅんこ組長が退団者1人1人を紹介した。
笑いを交えながらも、組長さん自身が涙で声を詰まらせていた。自分の言葉での、本当に心温まる、すばらしいご挨拶だった。
このご挨拶の話は、kineさんが9月17日の日記に詳しく書いてくださっている。
てか、ちょっと自慢。kineさんは前楽の夜、ホテルでせっせと記事を書き、真夜中にアップされた。同じ部屋に泊まっていた私は、それを真っ先に見た!(大威張り)
あの日の日記、読者第1号は私なのよっ……これ、自慢になるんですかね?(それでも大威張り)
湖月わたるサヨナラショー
・「大漁ソーラン」@’00『ミレニアム・チャレンジャー』宙組
わたるさんのソロから「星組ソーラン、準備はいいかっ?」の掛け声で、組子が加わってのダンスに。
これはわたるさんのために、いや、星組のためにあるナンバー?わたるさんも組子も異様に熱く、まさに星組!
最後は全員の背中に「星」。わたるさんの背中がめくられ、そこには「卒」の文字。
これは元々、専科にいくわたるさんの背中の「宙」をめくると「専」というネタだった。
あのときわたるさんは宙組を卒業し、それから星組に凱旋して、今宝塚を卒業しようとしている。
・「カリビアン・ナイト」@’04『タカラヅカ絢爛』
わたるさんのソロ。
熱く、明るく、わたるさんらしく、星組らしく。大好きなショーだった。
前楽からスタンディングがあり、大楽は客席総立ち。もちろん♪セニョパティ・セニョパミ……は客席総踊り。
これ、何回踊ったんだろう?だけど、こんなに泣きながら「カリビアン・ナイト」を踊ったのは初めてだ。
・「花に誓う」@’04『花舞う長安』
白いチャイナ・ドレス、となみちゃんの楊貴妃。檀ちゃんに負けず劣らずの美しさ。
・「アン・ドゥ・トロワ」@’06『ベルサイユのばら』
わたるさんのソロ。
この歌に対しても、この作品に対しても、正直に言うと複雑な思いはある。
ただ、kineさんが仰っている「歴史ある宝塚の名作で、新曲が書き下ろされてその創唱者である」ということ、それはやはり大きな意味があるのだろう。なつめファンの友だちが、「『愛の面影』は、なつめさんのために書き下ろされた歌なのよ」と誇らしげに言い続けるように。
・「アリヴェデルチ・ローマ」@’04『ロマンチカ宝塚’04ドルチェ・ヴィータ!』
これは別れの歌だ。そして、わたるさんが黒燕尾でケロちゃん、みっこちゃんを見送った曲だ。
今、卒業するわたるさん自身が、白燕尾で私たちに別れを告げる。となみちゃんと最後のデュエット・ダンスを踊る。
最初に聞こえてくるのはシビさんのアルトではなく、しのぶさんのソプラノ。澄んだ美しい、かつ独特の味を持つ、しのぶさんの歌声。
あのときのケロちゃん、みっこちゃんと同じタイミングで、さっちゃん&ふありちゃん、とみぃ&ひよりちゃんが踊りに入ってくる。振付も同じだ。男役は白燕尾、娘役は赤いドレス。晴れやかな彼らの顔が、眩しい。
しのぶさんから歌い継ぐのは、あのときと同じエンディーさん。深みのある正統派の、朗々とした歌声。
『ドルチェ・ヴィータ!』東宝大楽で、エンディーさんは歌い始めの声が涙で詰まってしまったが、持ち直して見事に同期2人を見送った。
今回の大楽は歌い始めではなく、その歌声で劇場から大きな拍手が起こった瞬間、ちょっと声を詰まらせた。それは一瞬だけで、あとは最後まで美声を響かせてくれた。
あのときは悲しみを堪えて、だが、今は清々しく凛とした顔で。
ここは、退団者と組替のとなみちゃんのだけの場面。
あのときの別れと今の別れが、シンクロする。美しくせつない光景。
・「L’AMOUR/1914」@’04『1914/愛』
前場の退団者の並びにみらんちゃんがいなかったのだが、この場面でソロで歌った。
わたるさんのアリスティドが大好きだ。あったかくて懐の広い、本当にいい男だった。
そのアリスティドを、みらんちゃんが歌う。
しみじみ退団が惜しい。まだまだたくさんの可能性を秘めた人だと思えるのに。
でも、みらんちゃん。あなたの歌の通りだ。「夢見るために人は生まれた」んだよね。「夢は見続けてこそ夢」なんだよね。
たとえ形は変わっても、あなただけの夢を見続けてください。
蛇足。歌声がちょっと揺らいで聞こえたので、終演後「みらんちゃん、感無量だったんだねえ」と言ったら、「……いや、彼はダンスの人だから……じゃないの?」と返されたんだが。さて、真相は?(大和煮えが言うな)
・「エジプトは領地を広げている」@’03『王家に捧ぐ歌』
前楽でペンライト事件勃発!(9/18日記「しあわせのペンライト」参照)
大楽は、ここでペンライトを振る人はさすがにいなかった(笑)。
豪快な歌いっぷりが、まさにラダメスで、まさにわたるさん。
これは、始まりの歌。ラダメスは将軍となり、わたるさんは星組の頂点に立った。
そう、「選ばれし将軍」の、始まりの歌だ。
・「月の満ちるころ」@’03『王家に捧ぐ歌』
……アイーダが出てきた!!
わたるさんがラダメスの衣装で出てきただけでも驚いたのに、瞳子ちゃんがアイーダの衣装で出てきた!!
前楽、劇場はどよめきに包まれた。デュエット、銀橋のラヴ・シーンふたたび。
そして、トップ男役と次期トップ男役は固く抱き合い、熱いキスを交わした……。
まさか、ここまで観られるとは思ってもみなかった。大好きな『王家』、大好きなラダメス、大好きなアイーダ。『王家』は私のヅカファン人生に於いて、確実にひとつのターニング・ポイントとなっている作品。深い思い入れがある。
さっきまで男役でがっちり組んでいた2人が、台詞入りで恋人同士を熱演、さらにラヴ・シーンまで見せてくれる。こんなサヨナラショーってありなのか?(ありありありありありっ!)
瞳子ちゃんは完全に女性だった。本当にすごい人だ。
男役としても進化し続け、なおかつ、さっと切り替えがきく役者としてのあの力量。
女性になりきれるのは、歌の力も大きいだろう。男役で公演中なのに、アイーダのソプラノは完璧。今さらながら、その歌唱力に感嘆させられる。
瞳子ファンのヨオちゃんは謙遜半分で「鬘の力って素晴らしいわ、ロン毛のカツラ!みんな騙されてくれてありがとう」などと言うが(笑)、いやあ騙されてなどいない。あれは、恋をする女の子だ。
もう一度ラダメスとアイーダに会えるなんて!夢のなかにいるように、しあわせだった……でも、驚いた〜。
・「シバの祈り〜ソウル・オブ・シバ」@’05『ソウル・オブ・シバ!!』
しいちゃん、すずみん、ちえちゃんの3人で。
最初はこの3人、しいちゃんセンターで登場した。
と思ったら、しいちゃんセンターのまま部分ソロになり、次にすずみんと場所替えしてすずみんセンターで部分ソロ、すぐにすずみんとちえちゃんが場所替えしてちえちゃんが部分ソロ……巧妙に?入れ替わって、そのままみんなの歌となり、最後までちえちゃんセンターで終了。あれあれあれ?
星組は、あくまでも3番手をうやむやにしたいらしい。
でも、3人は仲良く楽しそうに歌っているわけで。センターが誰かなんて、そんなこといいんだよね、もう。
・「すみれの花さく頃」ボレロ@’05『ソウル・オブ・シバ!!』韓国バージョン
大階段の男役黒燕尾群舞。『シバ』韓国公演用にこのボレロが加えられたというのは、kineさんの受け売り(笑)。
ただもう!かっこよすぎ!
・「世界に求む」@’03『王家に捧ぐ歌』
わたるさんのソロから組子全員で。
大楽はちゃんとここでペンライト(笑)。ちなみに大楽のペンライトは星の形。そしてもちろんブルーの光。
この世に平和を この地上に輝きを
人みな あふれる太陽浴び 微笑んで暮らせるように
戦いに終わりを この地上に喜びを
人みな ひとしく認めあって お互いを許せるように
たとえ今は 夢のように思えても
この身を捧げて そんな世界をいつかきっと
祈ろう明日を この地上にこそ希望を
人みな 時代から時代へと 誇らしく語れるように
そんな世界を 私は求めてゆく
キムシンの歌詞は、相変わらずベタだ。そんな言葉は、所詮ただの綺麗事でしかないかもしれない。
でも、本当にそう思える。わたるさんの歌からは、いつも愚直なまでの祈りが聞こえる。
だからこの言葉が、私たちの心にダイレクトに響いてくるのだ。
「この地上に輝きを。この地上に喜びを。この地上にこそ希望を」
地下牢に沈むラダメスとアイーダは、地上に向けてこの祈りの歌を歌った。
暗い地下牢のなかで、ただひとつできること。それは、祈ること。
その祈りに呼応するかのように、地上のアムネリスは平和を宣言し、戦士たちは静かに武器をおいた。
今これを歌っているのは、ラダメスではない。黒燕尾に身を包んだ、湖月わたるだ。
これは、わたるさんの祈りだ。わたるさんからのメッセージだ。
銀橋に出たわたるさんは、自分の祈りに呼応して唱和する組子たちの顔を、振り返ってゆっくりと見渡した。
そして、その祈りが私たちに。いや、世界に届けと言わんばかりに。
客席に向き直り、真っ直ぐに手を差し伸ばした。
「たとえ今は夢のように思えても、そんな世界をいつかきっと」
私も信じよう。
そんな言葉は、それでもやはり、ただの綺麗事でしかないかもしれない。
でも、信じよう。私も祈ろう。
この世界が、これからの星組が、退めてゆく人たちの新しい道が。
輝きと、喜びと、希望に彩られますように。
……需要もないのに書くのが、ジュンタ・クオリティ。
前楽のサヨナラショーの前に、じゅんこ組長が退団者1人1人を紹介した。
笑いを交えながらも、組長さん自身が涙で声を詰まらせていた。自分の言葉での、本当に心温まる、すばらしいご挨拶だった。
このご挨拶の話は、kineさんが9月17日の日記に詳しく書いてくださっている。
てか、ちょっと自慢。kineさんは前楽の夜、ホテルでせっせと記事を書き、真夜中にアップされた。同じ部屋に泊まっていた私は、それを真っ先に見た!(大威張り)
あの日の日記、読者第1号は私なのよっ……これ、自慢になるんですかね?(それでも大威張り)
湖月わたるサヨナラショー
・「大漁ソーラン」@’00『ミレニアム・チャレンジャー』宙組
わたるさんのソロから「星組ソーラン、準備はいいかっ?」の掛け声で、組子が加わってのダンスに。
これはわたるさんのために、いや、星組のためにあるナンバー?わたるさんも組子も異様に熱く、まさに星組!
最後は全員の背中に「星」。わたるさんの背中がめくられ、そこには「卒」の文字。
これは元々、専科にいくわたるさんの背中の「宙」をめくると「専」というネタだった。
あのときわたるさんは宙組を卒業し、それから星組に凱旋して、今宝塚を卒業しようとしている。
・「カリビアン・ナイト」@’04『タカラヅカ絢爛』
わたるさんのソロ。
熱く、明るく、わたるさんらしく、星組らしく。大好きなショーだった。
前楽からスタンディングがあり、大楽は客席総立ち。もちろん♪セニョパティ・セニョパミ……は客席総踊り。
これ、何回踊ったんだろう?だけど、こんなに泣きながら「カリビアン・ナイト」を踊ったのは初めてだ。
・「花に誓う」@’04『花舞う長安』
白いチャイナ・ドレス、となみちゃんの楊貴妃。檀ちゃんに負けず劣らずの美しさ。
・「アン・ドゥ・トロワ」@’06『ベルサイユのばら』
わたるさんのソロ。
この歌に対しても、この作品に対しても、正直に言うと複雑な思いはある。
ただ、kineさんが仰っている「歴史ある宝塚の名作で、新曲が書き下ろされてその創唱者である」ということ、それはやはり大きな意味があるのだろう。なつめファンの友だちが、「『愛の面影』は、なつめさんのために書き下ろされた歌なのよ」と誇らしげに言い続けるように。
・「アリヴェデルチ・ローマ」@’04『ロマンチカ宝塚’04ドルチェ・ヴィータ!』
これは別れの歌だ。そして、わたるさんが黒燕尾でケロちゃん、みっこちゃんを見送った曲だ。
今、卒業するわたるさん自身が、白燕尾で私たちに別れを告げる。となみちゃんと最後のデュエット・ダンスを踊る。
最初に聞こえてくるのはシビさんのアルトではなく、しのぶさんのソプラノ。澄んだ美しい、かつ独特の味を持つ、しのぶさんの歌声。
あのときのケロちゃん、みっこちゃんと同じタイミングで、さっちゃん&ふありちゃん、とみぃ&ひよりちゃんが踊りに入ってくる。振付も同じだ。男役は白燕尾、娘役は赤いドレス。晴れやかな彼らの顔が、眩しい。
しのぶさんから歌い継ぐのは、あのときと同じエンディーさん。深みのある正統派の、朗々とした歌声。
『ドルチェ・ヴィータ!』東宝大楽で、エンディーさんは歌い始めの声が涙で詰まってしまったが、持ち直して見事に同期2人を見送った。
今回の大楽は歌い始めではなく、その歌声で劇場から大きな拍手が起こった瞬間、ちょっと声を詰まらせた。それは一瞬だけで、あとは最後まで美声を響かせてくれた。
あのときは悲しみを堪えて、だが、今は清々しく凛とした顔で。
ここは、退団者と組替のとなみちゃんのだけの場面。
あのときの別れと今の別れが、シンクロする。美しくせつない光景。
・「L’AMOUR/1914」@’04『1914/愛』
前場の退団者の並びにみらんちゃんがいなかったのだが、この場面でソロで歌った。
わたるさんのアリスティドが大好きだ。あったかくて懐の広い、本当にいい男だった。
そのアリスティドを、みらんちゃんが歌う。
しみじみ退団が惜しい。まだまだたくさんの可能性を秘めた人だと思えるのに。
でも、みらんちゃん。あなたの歌の通りだ。「夢見るために人は生まれた」んだよね。「夢は見続けてこそ夢」なんだよね。
たとえ形は変わっても、あなただけの夢を見続けてください。
蛇足。歌声がちょっと揺らいで聞こえたので、終演後「みらんちゃん、感無量だったんだねえ」と言ったら、「……いや、彼はダンスの人だから……じゃないの?」と返されたんだが。さて、真相は?(大和煮えが言うな)
・「エジプトは領地を広げている」@’03『王家に捧ぐ歌』
前楽でペンライト事件勃発!(9/18日記「しあわせのペンライト」参照)
大楽は、ここでペンライトを振る人はさすがにいなかった(笑)。
豪快な歌いっぷりが、まさにラダメスで、まさにわたるさん。
これは、始まりの歌。ラダメスは将軍となり、わたるさんは星組の頂点に立った。
そう、「選ばれし将軍」の、始まりの歌だ。
・「月の満ちるころ」@’03『王家に捧ぐ歌』
……アイーダが出てきた!!
わたるさんがラダメスの衣装で出てきただけでも驚いたのに、瞳子ちゃんがアイーダの衣装で出てきた!!
前楽、劇場はどよめきに包まれた。デュエット、銀橋のラヴ・シーンふたたび。
そして、トップ男役と次期トップ男役は固く抱き合い、熱いキスを交わした……。
まさか、ここまで観られるとは思ってもみなかった。大好きな『王家』、大好きなラダメス、大好きなアイーダ。『王家』は私のヅカファン人生に於いて、確実にひとつのターニング・ポイントとなっている作品。深い思い入れがある。
さっきまで男役でがっちり組んでいた2人が、台詞入りで恋人同士を熱演、さらにラヴ・シーンまで見せてくれる。こんなサヨナラショーってありなのか?(ありありありありありっ!)
瞳子ちゃんは完全に女性だった。本当にすごい人だ。
男役としても進化し続け、なおかつ、さっと切り替えがきく役者としてのあの力量。
女性になりきれるのは、歌の力も大きいだろう。男役で公演中なのに、アイーダのソプラノは完璧。今さらながら、その歌唱力に感嘆させられる。
瞳子ファンのヨオちゃんは謙遜半分で「鬘の力って素晴らしいわ、ロン毛のカツラ!みんな騙されてくれてありがとう」などと言うが(笑)、いやあ騙されてなどいない。あれは、恋をする女の子だ。
もう一度ラダメスとアイーダに会えるなんて!夢のなかにいるように、しあわせだった……でも、驚いた〜。
・「シバの祈り〜ソウル・オブ・シバ」@’05『ソウル・オブ・シバ!!』
しいちゃん、すずみん、ちえちゃんの3人で。
最初はこの3人、しいちゃんセンターで登場した。
と思ったら、しいちゃんセンターのまま部分ソロになり、次にすずみんと場所替えしてすずみんセンターで部分ソロ、すぐにすずみんとちえちゃんが場所替えしてちえちゃんが部分ソロ……巧妙に?入れ替わって、そのままみんなの歌となり、最後までちえちゃんセンターで終了。あれあれあれ?
星組は、あくまでも3番手をうやむやにしたいらしい。
でも、3人は仲良く楽しそうに歌っているわけで。センターが誰かなんて、そんなこといいんだよね、もう。
・「すみれの花さく頃」ボレロ@’05『ソウル・オブ・シバ!!』韓国バージョン
大階段の男役黒燕尾群舞。『シバ』韓国公演用にこのボレロが加えられたというのは、kineさんの受け売り(笑)。
ただもう!かっこよすぎ!
・「世界に求む」@’03『王家に捧ぐ歌』
わたるさんのソロから組子全員で。
大楽はちゃんとここでペンライト(笑)。ちなみに大楽のペンライトは星の形。そしてもちろんブルーの光。
この世に平和を この地上に輝きを
人みな あふれる太陽浴び 微笑んで暮らせるように
戦いに終わりを この地上に喜びを
人みな ひとしく認めあって お互いを許せるように
たとえ今は 夢のように思えても
この身を捧げて そんな世界をいつかきっと
祈ろう明日を この地上にこそ希望を
人みな 時代から時代へと 誇らしく語れるように
そんな世界を 私は求めてゆく
キムシンの歌詞は、相変わらずベタだ。そんな言葉は、所詮ただの綺麗事でしかないかもしれない。
でも、本当にそう思える。わたるさんの歌からは、いつも愚直なまでの祈りが聞こえる。
だからこの言葉が、私たちの心にダイレクトに響いてくるのだ。
「この地上に輝きを。この地上に喜びを。この地上にこそ希望を」
地下牢に沈むラダメスとアイーダは、地上に向けてこの祈りの歌を歌った。
暗い地下牢のなかで、ただひとつできること。それは、祈ること。
その祈りに呼応するかのように、地上のアムネリスは平和を宣言し、戦士たちは静かに武器をおいた。
今これを歌っているのは、ラダメスではない。黒燕尾に身を包んだ、湖月わたるだ。
これは、わたるさんの祈りだ。わたるさんからのメッセージだ。
銀橋に出たわたるさんは、自分の祈りに呼応して唱和する組子たちの顔を、振り返ってゆっくりと見渡した。
そして、その祈りが私たちに。いや、世界に届けと言わんばかりに。
客席に向き直り、真っ直ぐに手を差し伸ばした。
「たとえ今は夢のように思えても、そんな世界をいつかきっと」
私も信じよう。
そんな言葉は、それでもやはり、ただの綺麗事でしかないかもしれない。
でも、信じよう。私も祈ろう。
この世界が、これからの星組が、退めてゆく人たちの新しい道が。
輝きと、喜びと、希望に彩られますように。
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