桜の枝を抱えて、かしちゃんが楽屋口から出てきた。

卒業。

美しい、清々しいお顔で、かしちゃんが楽屋口から出てきた。

かしちゃんのあとから出てきたのは同期のユキちゃん、ビデオを手にした元雪組の悠さん、その他OGさんたち……の中に。

ちぎがいた。

グラバー邸であおいちゃんが振っていた「竜馬命」の旗を手に、先輩たちに混ざって、ちぎが出てきた。

ちぎが着ていたのはムラ千秋楽のときと同じかしちゃんお顔がベタベタプリントしてあるシャツ、それがさらにバージョンアップしていて、背中にお面のようなかしちゃんお顔がいくつも貼り付けてあった(笑)。

楽屋口でかしちゃんを見送る彼ら、その中で旗を振りながら、びよんびよん飛び跳ねるちぎ。

「かしちゃーーーん!」
ガードのファンから声が飛ぶ。

「かしちゃーーーん!」
OGさんたちも「せ−のっ!」で声を合わせて叫ぶ。

「かしさーーーん!」「かしさーーーん!」
ひとりだけ「さん」付けだから、やたら目立つんだよちぎの声ってば。

それでも、かしちゃんは歩いてゆく。

遠くへ。

遠くへ。

一歩、また一歩。

かしちゃんは楽屋口から、遠くの世界へ向かってゆく。

「かしさーーーん!」
いやいやをする小さな子どものように、ちぎはバタバタと地団駄を踏んだ。

「かしさーーーん!」
気が狂ったように旗を振り回し、ちぎはついには楽屋口の先の一段高いところに上がって叫びはじめた。

「かしさーーーん!」
その高いところでびよんびよん飛び跳ねながら、ちぎは必死で叫んでいた。

かしさん、振り向いて。
もう一度、お願い。

自分たちだけでは声が足りないんだ。
かしさんに声が届かないんだ。
だから、かしさんが振り向いてくれないんだ。

ちぎは自分の前にいるかしちゃん会のガードを煽りはじめた。
ガードの人たちに向かって、「いくよ!いくよ!せーのっ!」って煽る。
そして、ファンと一緒に叫び続けた。

「せーのっ!」「かしさーーーん!」
「せーのっ!」「かしさーーーん!」
「せーのっ!」「かしちゃーーーん!」
「せーのっ!」「かしちゃーーーん!」

いつの間にか「ちゃん」付けになってるし(笑)。

あたしはちぎちゃんになりたかったです。

大好きです、と。
ありがとう、と。
さようなら、と。
我を忘れて叫びたかったです。
「かしちゃーーーん!」と。

小さな子どものように。
ただひたすら。
声の限りに叫びたかったです。
「かしちゃーーーん!」と。

2007年2月12日。貴城けい、宝塚卒業。

かしちゃん、るいちゃん、右京さん、ゆうりくん、純ちゃん、杏ちゃん、さゆりちゃん。
ご卒業おめでとうございます。

通いました。
最後は自分の空き時間すべてを観劇にあてました。
40回観たぜよ……。
かしちゃんのファンの中には、当然もっともっと劇場に通われたかたがいらっしゃると聞いています。

しあわせな記憶がいっぱいあるので、当分ネタには困らないわ。
ぼちぼち書いていきます。
自分のしあわせを、自分の中で、残しておきたいから。

この作品、駄作ですか?
まあ、外部が何と言ってもいいの。

私はこの公演を愛しています。

かしちゃんとるいちゃんが、宙組のみんなが、この公演で創ってくれたものすべてを愛しています。

そして、何と言われようと、この恍惚は観た人間にしか分からない。
私は今、しあわせです。

あ、ちぎは帝国ホテルでも暴れてたらしーですね(笑)。
「かしさん大好きでええええええす!(絶叫)」
「ファン代表でええええええす!(絶叫)」

やっぱり、あたしはちぎちゃんになりたかったです(笑)。

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