変身。

2007年5月16日 貴城けい
変身を出したついでに、「変身」のお話。

変身。ええ、かあわあいいメガネのバトラーくんが、かっこいーデュークに変身する。私のだあい好きなあの場面ですね。

そう、私はとにかく変身が、「夜会」が大好きなのだ。

大好き。だあい好き。

だが最初からこの「夜会」が好きだったのかというと、前にも書いたかもしれないが(馬鹿だから忘れた)、実は違う。

『ザ・クラシック』大劇場初日。
「冬の庭園(雪)」、つまり「夜会」の場面。
テーブルを拭くバトラーの後ろ姿、そして彼が振り向いてピンスポがあたったとき。
劇場には戸惑いの空気が流れた。

だって、誰だか分かんないんだもん。

「え?かしちゃん?かしちゃんか?」みたいな、拍手入れていーものやら、だって誰だか分かんないんだもん。

ビン底丸メガネに、マッシュルームの鬘。
ダボダボの服で、カキーン!と笑うバトラーくん。

ああ、あのお口はかしちゃんだ。
そう思って拍手を入れた。
しかし、ほんの一瞬だが、劇場にはたしかに戸惑いの空気が流れたのだ。

そのとき、他のかたが、かしちゃんファンのかたがどう感じられたのかは分からない。
ただ、私は怒りがこみ上げてきた。

美しい人に「あんな格好」をさせる必要性がどこにあるのか、私にはまったく理解できなかったから。
中途半端なギャグを持ってくる必要など無い。
美しい人を、正しく美しく見せてくれればいい。
それでいいのに、それがいいのに、なんでこんなことをさせるんだ、と。

正直に言うと、初日はそれ以降、メガネのバトラーくんにはオペラを上げていない。
私は怒っていたのだ。
終演後に、「中詰をビシっとキメないでどーするよ!なんなのっ草野っ、あの場面」とかなんとか息巻いていた。

ような気がする。

たっ、たぶん。

なんせ馬鹿だから、記憶違いかもしれない。
まあ、私が初日に感じたことなど、どーでもいい。

私は気づいてしまったんだ。
翌日には、もう。

美しい人が「あんな格好」をすると、それは恐ろしいまでの可愛い人になるんだってことに。

この日から後は、鮮明に記憶している。
なんせ馬鹿なうえに都合よくできているのだ、私の頭は。

しかし、重要なのは顔カタチが美しいとか可愛いとか、そこではなかった。
そんなものは二の次だということにも、私はすぐに気づいてしまった。

その可愛い人は自由自在にくるくると表情を変え、めっちゃトホホ感も溢れさせつつ、あちこち動きまわる。
この表情が、この仕草が、トホホなくせにとんでもなく可愛い。たまらなく可愛い。
1分でも、いや1秒たりともと言って過言ではないぐらい、同じことなんて演ってないんだから。

生き生きと、それはきらきらと輝きながら。

この可愛い生きもの、ちょっとおぉなんなのおっ!!可愛くて可愛くて、あたし死にそぉなんですけどっ!!(息絶え絶え)

宝塚の拍手って、「入れる」部分がある。
トップさんが出てきたから、ピンスポ入ったから、拍手を「切る」、「入れる」。

私ねえ、本気だった。
バトラーくんが振り向いた瞬間、ぐああああああってテンション上がって、「きゃ〜〜〜っ!!」って本気で手え叩いてた。
全身の血が沸騰して、毎回確実に血管何本かブチ切れてた。

デュークに変身したあとのかっこよさも(含むオエップ口)、さらにくるくる変わる表情も、最後のとびっきりの笑顔も、みんなみんな大好き。

大好き。だあい好き。

だから、最初に「あんな格好」なのは正しいんだ。
全然違うかしちゃんを見せようとしたときの、ひとつの方法として。

でも、「草野先生ありがとう」とは、申し訳ないがあまり思っていないんだけど。

それは、あのバトラーくんを、あのデュークを、あの場面を、ここまでステキなさいこーのものに成しえたのは、貴城けい自身に他ならないと確信しているからだ。
かしちゃんが役者としてあれだけの多面性を持ち、尚且つそのスキルを存分に発揮してくれたからこそ、ああなったんだもんね。
脚本超えた部分だもんね。
それと、宙組のみんな。
ほんとうに楽しそうに毎日あの場面を演っていた、宙組のみんな。

今でもはっきり思い出せる。
東宝の楽が近づいた頃、デュークのかしちゃんがみんなの中に飛び込んでいくときの「うわうわうわあああ」って叫び声。
はっきり聞こえてくるの。

しあわせな、あの声。

その記憶のなかに在り続ける、しあわせな時間。

この時間を自身の魅力で創りあげた、貴城けいのものすごさって!!(震撼)

変身。

だから、かしちゃんはもうデュークには変身してくれないんだけど、彼女が持つ多面性はオンナノコになっても生きるはずだと、私は信じているのだ。
オンナノコになっただけで充分な変身なんだが、それ以上に。
宝塚という枠にはまらない、さらにいろんな変身を、いろんな貴城けいを。

これから、もっともっと。

かしちゃんなら、見せてくれると思うのよ。

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