これは、ムラで観た話です。でも書くとしたら、えりこちゃんが復帰してからにしようと思っていました。
そして東宝公演、宙組一同無事に千秋楽を終えました。
ほんとうにおめでとうございます。

ドン・ファン・カルデロ。本役はもちろんえりこちゃん。
大劇場公演中盤にえりこちゃんが無念の休演となり、1日だけ新公で演じたカチャが、そして残り大劇千秋楽までちぎちゃんが代役を務められたお役です。

カチャのドン・ファンは、結局本来の新公でしか観ることができませんでした。
ちぎちゃんのドン・ファンを私が最初に観たのは、代役に入られてから1週間後のことです。
代役にもそこそこ慣れてこられた頃だったんじゃないかな。

「かあわあいい」
これがそのときの正直な感想でした。
当時、こう書いたんですけどね。
http://diarynote.jp/d/73628/20070719.html

>ちぎちゃんらしいキラキラ感いっぱいで、いい意味での軽さと明るさ、人懐っこい可愛さに溢れています。
>レオン将軍に「親しくなんかしておらん。利用しているだけだ」と軽口を叩かれながら、実は子犬のよーにめちゃめちゃ可愛がられてそうなカルデロ(笑)。

ドン・ファンというのは、本来レオン将軍の片腕的役割を担っているわけです。
将軍と共にいろいろな戦闘パターンを想定しながら策を練り、部下に指示を出し、決戦の日に備えて裏で着々と準備を進めていたりするはずなんですよ。
このドン・ファン、その点ではあんまし有能そうには見えないな、と(笑)。
だけどやたらキラキラしていて、子犬みたいにレオン将軍にじゃれつくくるくるお目目がとにかく可愛かったの。

えりこちゃんにはえりこちゃんのドン・ファンがある。
そして、ちぎちゃんにはちぎちゃんのドン・ファンがある。
キラキラの甘えたさんなドン・ファンも、これはこれでアリだと思っていました。

次にちぎちゃんのドン・ファンを観たのはもう前楽、初見の日から10日後のことでした。

とにかく驚いた。

別人かと思うぐらいに。

明るさと人懐っこい可愛さには、相変わらず溢れている。そして、キラキラ。
これはちぎちゃん自身がそういう持ち味の人だから、どう演っても出てきますよね。

だけど、軽くなかったの。
子犬じゃなかったの。
デカかったの。懐がデカくて、大人だったの。

レオン将軍とのやりとりも余裕でこなし、有能な策士として対等に渡り合っている。
ひと言ひと言に、彼の知性が光っている。

そんな器を感じさせる、骨太な男でした。

この人なら、バレンシアの未来を変えられるかもしれない。
私、本気でそう思いました。

わずか10日です。
10日でここまで変わるんだ、変われる人なんだと。

ちぎちゃんの持つ、無限の可能性に震撼し。

泣きました。

ドン・ファンが出てくるたびに、震えと涙が止まらなかった。

父親を刺され、泣きながらルーカスに斬りかかっていくラストは、もう圧巻でした。
今までの意地をかなぐり捨てた、悲鳴にも近い「おやじっ!」という叫び。
その父の死を以て、やっと親子として心を分かち合えた、哀しい息子。

ちぎちゃんの放つキラキラが涙で曇り、なのにその涙がまたキラキラの光と変わって、さらにちぎちゃんから輝き放たれる。
そんな美しい美しい連鎖。

息が止まりそうだった。

新公もあり、本来の役替わりもあり、稽古続きだったその頃は、宙組のみんながとても痩せてしまっていたんです。
中でもちぎちゃんはげっそりと痩せ、でもその削げた頬と鋭くなった目には、恐ろしいほどの色気が匂い立っていました。

私はちぎちゃんの芝居を「巧い」と思ったことはなかったんですね。(そして私は、宝塚に於いて「巧い」ということはさほど重要であるとは思っていないのですが)

はじめてかもしれません。
ちぎちゃんの芝居を「巧い」と思ったのは。
それぐらい、ちぎちゃんがドン・ファンで最後に見せてくれたものは、衝撃的でした。

えりこちゃんのドン・ファンも、とても魅力的です。
それとはまったく違った形のちぎちゃんのドン・ファン、大人なドン・ファン、これもまたアリなんだと。
いろんな形があって、もちろん正解などないのだから。

まあ、それでもショーではかあわあいいチギーチュ演りきっちゃうところが、またちぎちゃんのステキさなんでしょうけれど(笑)。

東宝公演がはじまり、本役に戻られたちぎちゃんのマルコスもすごく進化していて(ここでやっと昨日に繋がる)、それにもまた驚かされたんですよね。

このまま、ちぎちゃんらしく。
真っ直ぐ前に進んでいって欲しい。

次の2番手バウ、今度はどんなちぎちゃんを見せてくれるんだろう。
すごおく楽しみです。

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