1927年、ハリウッド。
無声映画の黄金時代に突如吹き荒れる、トーキーという、新しい風。
その風に巻き込まれ、無声映画『闘う騎士』をトーキー化しようと、悪戦苦闘する製作者たち。
だが、問題は主演女優リナだ。
前代未聞の悪声、奇妙な台詞廻し。
彼女をなだめすかし、なんとか撮影を進めるべく、撮影所では連日珍妙な大騒ぎが繰り広げられる。
そもそも、リナは仕込んだマイクの位置を覚えない。胸にマイクを付ければ、それが心臓の音を拾ってしまう。肩にマイクを付けて、やっと上手くいくかと思いきや。
そのコードを、何も知らず現場に現れた所長が引っぱって、リナは派手にコケてしまう。
リナのドレスはガバっとめくれ、おみ足とドロワーズが丸見え。
ああ、『闘う騎士』の行く末はいかに。

シドくんは、リナたんのことが好きなんだと思うの。

リナたんのドレスめくれる。はい、ドロワーズ丸見え。
と、いちばん慌てて真っ先に飛んできて、手にした台本でそれを隠すのは、若き映画監督シドくん。
そんなにリナたんのぱんつが人目に晒されるのが嫌なのか、むしろオマイいちばん近くでリナたんのぱんつ見たいだけなんじゃねーのかと疑わざるをえない、あの素早すぎる行動。

ちなみに星組版では、その役割はメイク係の女の子のはずです。
宙組版ではメイク係の女の子も一歩遅れて出てきますが、そのときは既にシドくんが鉄壁でリナたんのぱんつの前に立ちふさがっております。

シドくんは、リナたんのことが好きなんだと思うの。

わがままで、皆を振り回して、憎らしいはずなのに、かわいくて全然憎めない。
リナたんの愛らしさにメロメロなのは、私たち観客だけではないのです。

まあ、リナたんはなんといってもハリウッドの主演女優ですよ。シドくん如き一監督に、普段は手の出るタマではないわけですよ。
でも、リナさんのピンチには、自分真っ先に飛んでいきますからっ!!みたいな。
いつも心の中で誓ってるわけ。

そして、『雨唄』千秋楽。

リナたんコケた。ドレスめくれた。
シドくんすっ飛んでくる。

リナたんのぱんつは……リナたんの穿いてたぱんつは……。



ワ ト ソ ン く ん の 金 ぱ ん つ だった。

(死)



シドくん、オマイ……オマイ……。



シドくんは、リナたんのことが好きなんだと思うの。

だからって。だからって。


自分の穿いてた金ぱんつ、プレゼントしちゃいますかっ?



オマイはああああああーーーーーーっっ!!!



シドくんがリナたんに惹かれたのは、偶然ではなく必然。

だって彼らは、前世でコンビだったから。

リナたんは多分イギリスの探偵で、シドくんは多分その助手。
いつでも「僕たち名コンビっ!」で、いつでも二人は一緒だった。

もしかしたらそのときはシドくんが女子になったりもして、もしかしたらピンクのドレスの下に金ぱんつを穿いていたかもしれない。

シドくんの頭のどこかには、その素晴らしく楽しかった前世の記憶が、幽かに残っている。
だから、シドくんがリナたんに惹かれたのは、偶然ではなく必然。
そして、ふと思うわけ。

「この記憶の金ぱんつを、最後の一日に穿いてくれないだろうか?」

ワトソンくん、もといシドくんが唐突に差し出した金ぱんつを、Mr.ホームズ、もといリナたんが何故穿いてみようという気になったのか、それは分からないけど。

リナたんの頭のどこかにも、無意識下の記憶として残っていたのかもしれない。
自分の目の前に立つ若い映画監督の、かわいいピンクのドレス姿と、持ち上げた裾の下から覗く金ぱんつが。

そして突如、浮かんできたのであろう。

彼が金ぱんつを見せながら、「ミスタあああ~~っ!」と自分の後をニコニコ付いて回る、不思議な情景が。



『雨唄』千秋楽最大のアドリブは、リナたんの金ぱんつである(断言)。

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