甦生@『雨に唄えば』梅芸
2008年9月24日 宙組梅芸・全ツ走る。
外に飛び出したら、どしゃぶりの雨だった。
その中を。
走る、走る、走る。
どこまで走ればいいの?
誰もあたしを追いかけてきてはくれにゃいの?
許せにゃい、あんな仕打ち。
あたしが何をしたっていうの?
あいつらの言うとおりにしたのよ。
あの娘が緞帳の後ろで歌うって、それであたしが映画みたいに口を合わすって、そうしたら上手くいくって。
あいつらは大勢のお客が観ている前で、笑いながらその緞帳を上げたのよ。
あの娘が歌ってる前で、あたしはお魚みたいにパクパクと口を開けてたのよ。
あいつらはあたしに大恥をかかせたのよ。
あいつら。所長と、あのピアノ弾きと、それからあたしのドン……あたしのふィィあんしィが。
許せにゃい。
許さにゃい。
許さ、にゃ、いっ!
どこまで走ればいいの?
誰もあたしを追いかけてきてはくれにゃいの?
あたしのふィィあんしィは何をしてるの?
ううん。リナ・ラモントは馬鹿じゃにゃいわ。
あたしはたしかに脱色パーマだけど、その下の脳ミソは小さくにゃんかにゃいもんっ。
とっくに知ってるのよ。あたしのふィィあんしィが、あたしのことにゃんか好きじゃにゃいって。
あの娘のことが好きにゃんだもんっ。間違いにゃいもんっ。
ううん。その前から。最初から。
あたしのふィィあんしィが、あたしを好きでいてくれたことは。
にゃい、にゃい……にゃい。
泣いてにゃんかにゃいわっ。
ドンと組んでにゃければ、あたしは倍ぐらい大きくにゃってたわっ。
あたしだってあたしのふィィあんしィのことにゃんか、全然好きじゃにゃいもんっ。
ううん。それだけじゃにゃいのも知ってる。
あたしの周りの奴らが好きだっのは、あたしじゃにゃくてあたしの名前。
それも今日で終わりにゃのかしら?
ゼルダはほんとうのお友だちだけど、でもほんとうのお馬鹿さんだから。
……泣いてにゃんか……にゃ、い、わ。
にゃい、にゃい、にゃい!
だけど、もう走れにゃい。
ドレスは雨でぐちゃぐちゃだし、ヒールも折れちゃったし。だいいち、寒いし。
すごく、寒いし。
……もう走れ、にゃ……い。
うずくまったあたしの肩に、そのときおずおずと手が置かれた。
やっだあ、あたしのふィィあんしィがあたしを迎えにきてくれたんだわっ!
あたしのこと、やっぱり心配してくれてるのにぇっ!
もおっドンったら、しばらっくれてええ!
顔を上げると。
そこには。
冴えない、背の高い若い男の子が、困ったような泣き出しそうな顔で立っていた。
にゃんにゃの、この男の子?
そんにゃ顔するんじゃにゃいわよ、泣き出したいのはあたしのほうよ。
リナ・ラモントは泣かにゃいけどね。人前では、決して。
キっと睨んでやると、彼はビクっと弾かれたように、あたしの肩に置いた手を外した。
当たり前だわ、リナ・ラモントに気安く触らにゃいでちょうだいっ。
誰だったかしら、この男の子。茶色いセーターに、にゃんだか見覚えがあるわ。
ああ、シド。シド・フィリップスとかいう、若手の映画監督。下っ端よ。
いつ見ても同じ格好だったわ、今日もだわ、他に服持ってにゃいのかしら?可哀相な男の子!
そんな分際であたしを追いかけてくるなんて、馬っ鹿みたい!
あんたににゃんか興味はにゃいわ。
あたしは立ち上がり、雨の中を、前を向いて折れたヒールで毅然と歩き出す。
リナ・ラモントは大スターにゃんだから、にぇっ。
すると。
彼は慌てて自分の安っぽいベージュのジャケットを脱いで、あたしの剥き出しの肩に、それをふわりと乗せた。
何様のつもり?
こんにゃ安物のジャケットをリナ・ラモントに着せようだにゃんて、ほっんと馬っ鹿みたい!
その前に、このジャケットときたら、やたら肩幅が狭いわ。あたしの肩、隠れにゃいじゃにゃい!
まったく男のくせに、ってあれ?もしかしたら女のあたしの肩幅が異様に広いのかしら?
そんにゃこと、にゃ、にゃにゃにゃっ、っ……ある?
まあ、それはいいわよ、だいたい雨の中を走ってきたあんたのジャケットもびちょびちょなんだからにぇっ、それ分かってるのかしらっ。
失礼にゃ男の子だわっ。
もう一度キっと睨んでやると、彼、今度は真っ直ぐにあたしを見返してきた。
そしてその目は、ドキンとするぐらいあたたかな光に満ちていて。
あたしは。
彼から目を逸らせず、そのまま泣いてしまった。
あたしのふィィあんしィは、あたしをこんな目で見てくれたことにゃんて、にゃ、い。
一回も、にゃ、い。
シド。
……ども。どもども……ね。
びちょびちょのジャケットは、何故だかとてもあたたかかったわ。
さっきは冴えない男の子って思ったけど、きっと洋服のせいよ、よく見たら綺麗な顔してるもの。
背の高い彼に似合うステキなジャケットを着せたら、ドンにゃんかよりぜっんぜええんイイ男だわ。セーターも、もっと派手にゃほうがいい。
そうだ、彼に新しいジャケットを買ってあげよう。
やっだあ、別にこの男の子を喜ばそうとかそんにゃこと思ってにゃいわ、いつも一緒にいるあんたの羽織がボロボロだとうちが恥をかきますってこれは誰の台詞だったかしら?でも、そういうことよ。
あら?
あたしこの男の子といつも一緒にいるって、いつ決めたんだろう。
い、つ?
そう。リナ・ラモントは馬鹿じゃにゃいわっ。
弁護士に電話する、ママにも電話する、わーにゃーぶらざーずにも電話する!
世紀の大スター、リナ・ラモントがお宅に移籍してあげるって、若い才能溢れる映画監督も一緒だって。わーにゃーの奴ら、大喜びよっ。
多分、うまくいく。
絶対に、うまくいく。
リナ・ラモントは、ずっと独りで闘ってきたわ。
でも、もう独りじゃにゃいもんっ。
この男の子が一緒だもんっ。
シドが一緒だもんっ。
もう泣かにゃいもんっ。
「いのっ!」
これも誰の台詞だったかしら?でも、そういうことよ。
ツンと目の前に突き出されたあたしの右手を、恭しく掲げ持つシドの指先からは、またドキンとするぐらいあたたかなキモチが流れ込んできて。
あたしは。
もっと泣いてしまった。
しあわせって、指先から伝わってくる温度とか、もしかしたらこんにゃ小さにゃところにあるのかもしれ、にゃ、い。
あたし良いこと言ってるわよ、にぇっ?
泣き続けるあたしに、シドは小さな声で、でもはっきりとこう言った。
「貴女は映画界のテンソラに煌めき燃える星」
?!!!!!!
やっだああああああ!!!
やっぱりシドは優秀な映画監督よお、才能があるんだわああああああ!!!
だって、映画界の真実を知っているものおおおおおお!!!
早くわーにゃーに電話しにゃきゃ!
あたしたちの未来は、絶対にうまくいく。
リナ・ラモントは、新しい映画に出る。
シド・フィリップスが、その映画を創る。
『ジャズ・シンガー』なんか、軽く超える。
二人で大成功をおさめるのよっ。
そしてあたしたちは、いつも一緒にいる。
ずっと一緒にいる。
ずっと。ずっと。
間違いにゃ、い、もんっ!
外に飛び出したら、どしゃぶりの雨だった。
その中を。
走る、走る、走る。
どこまで走ればいいの?
誰もあたしを追いかけてきてはくれにゃいの?
許せにゃい、あんな仕打ち。
あたしが何をしたっていうの?
あいつらの言うとおりにしたのよ。
あの娘が緞帳の後ろで歌うって、それであたしが映画みたいに口を合わすって、そうしたら上手くいくって。
あいつらは大勢のお客が観ている前で、笑いながらその緞帳を上げたのよ。
あの娘が歌ってる前で、あたしはお魚みたいにパクパクと口を開けてたのよ。
あいつらはあたしに大恥をかかせたのよ。
あいつら。所長と、あのピアノ弾きと、それからあたしのドン……あたしのふィィあんしィが。
許せにゃい。
許さにゃい。
許さ、にゃ、いっ!
どこまで走ればいいの?
誰もあたしを追いかけてきてはくれにゃいの?
あたしのふィィあんしィは何をしてるの?
ううん。リナ・ラモントは馬鹿じゃにゃいわ。
あたしはたしかに脱色パーマだけど、その下の脳ミソは小さくにゃんかにゃいもんっ。
とっくに知ってるのよ。あたしのふィィあんしィが、あたしのことにゃんか好きじゃにゃいって。
あの娘のことが好きにゃんだもんっ。間違いにゃいもんっ。
ううん。その前から。最初から。
あたしのふィィあんしィが、あたしを好きでいてくれたことは。
にゃい、にゃい……にゃい。
泣いてにゃんかにゃいわっ。
ドンと組んでにゃければ、あたしは倍ぐらい大きくにゃってたわっ。
あたしだってあたしのふィィあんしィのことにゃんか、全然好きじゃにゃいもんっ。
ううん。それだけじゃにゃいのも知ってる。
あたしの周りの奴らが好きだっのは、あたしじゃにゃくてあたしの名前。
それも今日で終わりにゃのかしら?
ゼルダはほんとうのお友だちだけど、でもほんとうのお馬鹿さんだから。
……泣いてにゃんか……にゃ、い、わ。
にゃい、にゃい、にゃい!
だけど、もう走れにゃい。
ドレスは雨でぐちゃぐちゃだし、ヒールも折れちゃったし。だいいち、寒いし。
すごく、寒いし。
……もう走れ、にゃ……い。
うずくまったあたしの肩に、そのときおずおずと手が置かれた。
やっだあ、あたしのふィィあんしィがあたしを迎えにきてくれたんだわっ!
あたしのこと、やっぱり心配してくれてるのにぇっ!
もおっドンったら、しばらっくれてええ!
顔を上げると。
そこには。
冴えない、背の高い若い男の子が、困ったような泣き出しそうな顔で立っていた。
にゃんにゃの、この男の子?
そんにゃ顔するんじゃにゃいわよ、泣き出したいのはあたしのほうよ。
リナ・ラモントは泣かにゃいけどね。人前では、決して。
キっと睨んでやると、彼はビクっと弾かれたように、あたしの肩に置いた手を外した。
当たり前だわ、リナ・ラモントに気安く触らにゃいでちょうだいっ。
誰だったかしら、この男の子。茶色いセーターに、にゃんだか見覚えがあるわ。
ああ、シド。シド・フィリップスとかいう、若手の映画監督。下っ端よ。
いつ見ても同じ格好だったわ、今日もだわ、他に服持ってにゃいのかしら?可哀相な男の子!
そんな分際であたしを追いかけてくるなんて、馬っ鹿みたい!
あんたににゃんか興味はにゃいわ。
あたしは立ち上がり、雨の中を、前を向いて折れたヒールで毅然と歩き出す。
リナ・ラモントは大スターにゃんだから、にぇっ。
すると。
彼は慌てて自分の安っぽいベージュのジャケットを脱いで、あたしの剥き出しの肩に、それをふわりと乗せた。
何様のつもり?
こんにゃ安物のジャケットをリナ・ラモントに着せようだにゃんて、ほっんと馬っ鹿みたい!
その前に、このジャケットときたら、やたら肩幅が狭いわ。あたしの肩、隠れにゃいじゃにゃい!
まったく男のくせに、ってあれ?もしかしたら女のあたしの肩幅が異様に広いのかしら?
そんにゃこと、にゃ、にゃにゃにゃっ、っ……ある?
まあ、それはいいわよ、だいたい雨の中を走ってきたあんたのジャケットもびちょびちょなんだからにぇっ、それ分かってるのかしらっ。
失礼にゃ男の子だわっ。
もう一度キっと睨んでやると、彼、今度は真っ直ぐにあたしを見返してきた。
そしてその目は、ドキンとするぐらいあたたかな光に満ちていて。
あたしは。
彼から目を逸らせず、そのまま泣いてしまった。
あたしのふィィあんしィは、あたしをこんな目で見てくれたことにゃんて、にゃ、い。
一回も、にゃ、い。
シド。
……ども。どもども……ね。
びちょびちょのジャケットは、何故だかとてもあたたかかったわ。
さっきは冴えない男の子って思ったけど、きっと洋服のせいよ、よく見たら綺麗な顔してるもの。
背の高い彼に似合うステキなジャケットを着せたら、ドンにゃんかよりぜっんぜええんイイ男だわ。セーターも、もっと派手にゃほうがいい。
そうだ、彼に新しいジャケットを買ってあげよう。
やっだあ、別にこの男の子を喜ばそうとかそんにゃこと思ってにゃいわ、いつも一緒にいるあんたの羽織がボロボロだとうちが恥をかきますってこれは誰の台詞だったかしら?でも、そういうことよ。
あら?
あたしこの男の子といつも一緒にいるって、いつ決めたんだろう。
い、つ?
そう。リナ・ラモントは馬鹿じゃにゃいわっ。
弁護士に電話する、ママにも電話する、わーにゃーぶらざーずにも電話する!
世紀の大スター、リナ・ラモントがお宅に移籍してあげるって、若い才能溢れる映画監督も一緒だって。わーにゃーの奴ら、大喜びよっ。
多分、うまくいく。
絶対に、うまくいく。
リナ・ラモントは、ずっと独りで闘ってきたわ。
でも、もう独りじゃにゃいもんっ。
この男の子が一緒だもんっ。
シドが一緒だもんっ。
もう泣かにゃいもんっ。
「いのっ!」
これも誰の台詞だったかしら?でも、そういうことよ。
ツンと目の前に突き出されたあたしの右手を、恭しく掲げ持つシドの指先からは、またドキンとするぐらいあたたかなキモチが流れ込んできて。
あたしは。
もっと泣いてしまった。
しあわせって、指先から伝わってくる温度とか、もしかしたらこんにゃ小さにゃところにあるのかもしれ、にゃ、い。
あたし良いこと言ってるわよ、にぇっ?
泣き続けるあたしに、シドは小さな声で、でもはっきりとこう言った。
「貴女は映画界のテンソラに煌めき燃える星」
?!!!!!!
やっだああああああ!!!
やっぱりシドは優秀な映画監督よお、才能があるんだわああああああ!!!
だって、映画界の真実を知っているものおおおおおお!!!
早くわーにゃーに電話しにゃきゃ!
あたしたちの未来は、絶対にうまくいく。
リナ・ラモントは、新しい映画に出る。
シド・フィリップスが、その映画を創る。
『ジャズ・シンガー』なんか、軽く超える。
二人で大成功をおさめるのよっ。
そしてあたしたちは、いつも一緒にいる。
ずっと一緒にいる。
ずっと。ずっと。
間違いにゃ、い、もんっ!
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