スチュアート@大ちゃん。2回目の新公主演。
下手でした(笑)。技術的な見方をすれば、下手という範疇なのでしょう。

だけど。
感動しました。ものすごく感動しました。
大ちゃんのスチュアートに。
このスチュアートによって、はじめてパラプリという作品が自分の中にストンと落ちてきた。そう言いきっても過言ではない、そんな思いです。

私はスチュアートが口ではたいそうな夢を語りながら、その行動になんの現実味もないところに、甚だしく違和感を感じてしまうんですね。口で言うだけなら誰だってできる、この脚本のスチュアートは何もしていないんですよ。
きらきらした目で夢を語られるからこっちは騙されちゃうし、騙せる大和さんをスゴイと思うし、でもそれは所詮騙されているのだと。スチュアートは口だけで、夢に向かって進展性のある行動は何もしていない。

スチュアート@大和さんは、大人だから。
自分の目で物事をしっかり見据えて、自分の頭でそれを考え、そして行動する。それを出来るはずの人だから。
これが前提にあるから、スチュアートの行動に違和感を感じてしまうんです。

「公演を楽しむ」ことと「作品を考える」ことは私には別問題で、公演を楽しみたいから、楽しんでいるから、劇場には通っています。
きらきらしたスチュアート@大和さんは大好きです。
でも、ここに書かれているスチュアートはヘンだよ。そのキモチは拭えないの。

大ちゃんは違った。
若く、拙いスチュアート。
目の前で起きたことに、常に全力で取り組む。一生懸命頑張る。つか、目の前のことしか見えないの。
完全なる視野狭窄。次の出来事が起こってそっちを向くと、さっきまで見えていたことは頭から飛ぶの。

でも、その目の前のことには、全身全力で取り組むの。恐ろしいまでの真剣勝負。

今の地位を捨てて、自分の立場も考えず、目先の思いつきだけで家を飛び出す。たくさんの人にかける迷惑も、家族の心配も、何も考えちゃいない。

アニメーション作家になりたいからアニメ会社で動画を描くって、そもそもそこからして違うんじゃない?しかも2Dチームに配属になったのは偶然から。考え方、甘いんじゃないの?

それから「社内コンペ」と「仕事」も違うわけで。スチュアート、全く「仕事」してないからね。

スチュアートのそんな部分に、全部納得できました。
だって、大ちゃんは目の前のことしか見えてないもの。これでいいんだよ。
大和さんが大人なゆえに違和感を感じて仕方なかった行動のひとつひとつに、大ちゃんだと納得がいくの。

恋人のキャサリンが傷ついて、「あなたとなんか出会わなければよかった」と泣きながら部屋を飛び出す。あとを追うスチュアート、ここで携帯が鳴る。キャサリンほったらかして電話に出るのにも毎回すげー違和感感じるんだけど、これも納得。
携帯鳴ったら出るよ。さっきまでキャサリン追いかけようとしてたことなんて頭から飛ぶよ。
電話は妹のマギーからで、「ママが倒れた」。大変っ!そりゃあ簡単にNY帰るよ。ここでコンペのことは頭から飛ぶよ。
それまで夢のカタチとして書かれていた「パラプリアニメーションの社内コンペを皆で頑張る」をほったらかしにするのも分かるよ。

スチュアートがキモチ悪くないっ!!!!!!

目の前で起こったことに対処するのが精一杯なんですよね。
だけど、決してそれは不快じゃない。

だって、その目の前のことにどれだけ彼が全力か、それが痛いほど伝わってくるから。

すっごい下手くそかもしれない、でも。
すっごい真剣。

そんな大ちゃんが歌うBelieve in myselfに、号泣させられたのです。

自分自身を信じたくても 少し弱気でくじけるときや
自分の力信じたくても 抱えきれない不安に
一人やりきれず 暗闇の中立ちすくむ
だけど信じたい 僕自身を信じたい この想いを
必ずきっと道は見つかる
この足で歩き 迷い 転び たどりつく My dream

リアルに半分転びかけてるような奇妙なダンスで、必死に踊っていたオープニング。大ちゃんなら、NYからLAまで本当にだらだら汗を流しながら、自転車を漕いでいくだろう。
大ちゃんは、それをやってきた人だ。一歩ずつ、一歩ずつ。
顔が美しいからここまで来られたんじゃなくて。いや、それもあると思うけど(笑)、大ちゃんは地道に自転車のペダルをキコキコキコキコ必死に漕いできたからこそ、ここまでたどりついたんだよ。

人の心を打つものは、技術ではない。

想い、だ。

あなたはまだ若く、まだ拙い。だけど、あなたの真剣な想いは美しい。
そしてこのうえもなく尊い。

あなたの足で歩き、迷い、転びながらたどりついた、あなたの夢。
あなたは今、センターに立っている。

涙が止まりませんでした。

新公を卒業したこれからこそが大ちゃんにとっての真剣勝負で、本当にたどりつかなければならない夢は、その先にあるのでしょう。
拙いことが美しい、では通用しなくなるときが、必ず来るはずです。

だけど、いつまでもその全力で取り組むピュアな魂を忘れないで、大ちゃんらしくあって欲しい。
そうしたら、そのうち左右も見えてくるようになるだろうし(笑)、その先もおのずと開けてくると思うの。

そして。
今の大和さんが、スチュアートという人を脚本通り正しくヘンな奴にしてしまう立派な大人になっていることに、なんだか感慨を覚えるのです。
拙いけど一生懸命頑張るタニちゃん!なんかじゃ全然ないのね。そう、もうとっくに。
もちろんそれは、すばらしいことなのですが。

「いつの間にか大人になってしまったのね……」なあんてローズマリーを気取って呟いてみたりする(笑)。

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