ゲオルグ・シュタイネル@みーちゃん。
彼はパリ侵攻を進めるドイツ軍、ナチス親衛隊少佐。いまやパリの興行は、すべて彼の支配下に置かれている。
そして、「パリの女王」ことレビューの花形女優リーズ@アリスちゃんを、その権力で手中に収めている。

リーズは、彼のものだった。
そこへ、シャルル@カチャが帰ってきた。リーズが少女のときに恋をした人。
リーズとして生きるために忘れようとしてきた、純粋なジジの心を呼び起こす、優しい目の色をした人。

ゲオルグとリーズの関係は、ここから彼の思い通りにいかなくなってしまった。

「君をベルリンに連れていく。総統の許可も下りた」
業を煮やしたゲオルグは、そうリーズに告げる。ナチスの宣伝映画に出ろと。
激しく拒むリーズ。いくらゲオルグに身を委ねていても、リーズの中のジジは、それを許さなかった。
すると。

「それがナチスの命令ではなく、一人の男の頼みだとしたら」

ナチス親衛隊少佐が、「踊り子風情」に、ここまで言うのだ。
一人の男として、君を自分の国の、自分の傍に連れていきたいのだと。

あくまでも支配者の顔を崩さず、内心の激しい思いを押し殺し、だが強い目が語る。
愛していると。
決して口には出さない、プライドとして出せない、滾る思い。愛している。

ここのみーちゃんの目が、ものすごく効いてるんです。

もちろん、押し殺した低音の台詞回しも巧いんだけど。でも、なによりも目がいい。

これ以上言わずとも、あのねっとり、もとい、じっとり(あれ?たいして変わらない?笑)と蒼く燃える目がすべてなの。
それなのに、さらに続けて言うんですよ。

「私は君を……」

んなの分かってるつーのっ!!!

ほんとこれ嫌い。原田くん余計なこと言わせるなよーーってムカムカしてたわ。こーゆー親切は、心底迷惑ですからっ。
まあ、この程度のことが気に障るのは、私がゲオルグスキーだからなんでしょうが(笑)。
ゲオルグは、そんな余計なこと言いません(ぷんぷん)。
「それがナチスの命令ではなく、一人の男の頼みだとしたら」……ここまででいいのに。みーちゃんの目、あとはそれ以上言わないほうがかっこいいのに。
「私は君を……」という言葉の先は、部下のフィリップ@あっきーのノックに遮られるのですが。つか、その前で止めろよ原田くん。

いや私は、初日のみーちゃんは全てが(酷)ちーとも出来てないと思えて(酷)(すすすみません)、って他のかたがどう感じたかは分からないんですが、みーちゃんならもっとやれるはずでしょ?と、すごい不満だった。http://juntan.diarynote.jp/201003210114387036/
激しく渦巻く感情を、大人の顔で抑える……には至っていない、と思ったし。だからこの台詞も流してしまえたけど。
みーちゃんの芝居が上がっちゃったから(初日翌日から突然に)(笑)、もう気に障るったら。

実は何も描かれていないんですよね、ゲオルグって。こういう男は、役としてある種類型的ではあるけれど、この本では実際に描かれている部分が少なすぎる。だいいち、リーズ自体も言ってること変なんだもん(笑)。
それに対応して、描かれていないところをみーちゃんが埋めていかなければならない。大変な作業だったと思います。

それでも最初の頃は、わなわなと拳を震せたりね。それこそ唇ぎゅっぎゅっぎゅっぎゅっ噛み締めたりね。
「心の中の嫉妬の炎を、表面では抑えた演技」の方法として、それはそれで巧い人なので、悪いとは思わなかった。

だけどね。最後の数日は、唇を噛まなくなったんです。
くっ、と。僅かに、唇の端を歪めるだけの。

そうなってからの顔が……とてつもなく怖かった。

一人の男が、ここまで恋に狂ってしまうものなのかと。
この男は、どれだけリーズに狂わされているのかと。
その狂気に、背筋が凍った。

彼は、いつかリーズを手に掛けるであろう。必ずや。

あれは演技じゃない。
最後はゲオルグが、みーちゃんに憑いたんです。


春風弥里という人は、だからこれからが恐ろしいんですよ。
ゲオルグで、超えましたから。デカいもの掴みましたから。

もう「実力派」なんて生ぬるい呼称は、勘弁していただきたいわ(にやり)。


彼の表現は、「演技」などではないのだから。

その役、いや。その人間、そのものなのだから。

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