最後のゲオルグ@『Je Chante』バウ
2010年5月12日 宙組バウ・DC・青年館ゲオルグ@みーちゃんは、生きてはいられなかっただろう。
カジノ・ド・パリの地下室を出て、それからおそらく、いや間違いなく、自らの命を絶った。
リーズ@アリスちゃんを手に掛けた、その拳銃で。
彼は何故、リーズに拳銃を向けたのだろうか。
本当に殺してやろうと思ったのか。自分に背を向けた女を。
そうではない、と思う。
それほどまでにリーズを愛しているのだと。殺してでも手に入れたいほど愛しているのだと。
その叫びだ。本気で殺そうとは、思っていなかったはずだ。
「私は君を愛していた、いや、今でも君を愛している。君の秘密を揉み消すことだってできるんだぞ」
ユダヤ人である、秘密を揉み消すと。ここまで言うのだ、ナチス親衛隊少佐が。たったひとりの女のために。この言葉の持つ意味は重い。
「君を愛している」と。
わなわなと震える唇から絞りだされる、苦悩に満ちた言葉。
ゲオルグは決して、声では叫ばない。それは自分の立場に対する分別なのか、男としてのギリギリのプライドなのか。
表面では抑えて、抑えて、だが彼の心は叫んでいる。大声で叫んでいる。
「君を愛している」「君を愛している」
しかし、涙を流しながらも、リーズはゲオルグの言葉を拒否する。
リーズは愛するシャルル@カチャと再会して、純粋なジジの心を取り戻した。もう、リーズには戻れない。
リーズであった自分を、ゲオルグと過ごした時間を、彼女は捨てるという。シャルルと共に。
「そうか……」
どんな思いで、ゲオルグはこう吐き出すのだろう。
哀しい、哀しい目をするゲオルグ。
そこに見えるのは、怒りですらなく、深い絶望だ。
その絶望の淵から、一縷の望みを賭けて、彼は拳銃を取り出す。
君を手に入れられないのなら、殺してでも……そう、殺してしまいたいぐらいに。
君を愛している。
同じ言葉を、今度は彼女に拳銃を向けてみせることで、もっと激しく叫んでいるだけの話だ。だが、いくら繰り返し叫んでも、リーズは戻ってはこない。それは、虚しく哀しいものでしかない。
拳銃を握り締めるゲオルグの手は、ガタガタと震えている。彼は、決してリーズを撃てはしない。憐れにも震えきったその指先が、引き金を引くなどできないことを、はっきりと証明している。
見せかけの、哀しい男の叫び。
だが、リーズの前にシャルルが立った。彼女を、庇おうとして。
その瞬間、ゲオルグの目の色が変わる。彼の中に僅かに残っていた理性が、一瞬にして飛ぶ。
あれは、狂人の目だ。
いつも身近にリーズを置きながら、自分が最後まで決して手に入れることができなかった彼女のほんとうの心。
それを、いとも簡単に持っていってしまった男、シャルル。
激しい嫉妬が、ゲオルグを狂わせる。
狂気に取り憑かれた彼は、明確な殺意を持って、銃口をシャルルに合わせる。
「お前のくだらない歌など、二度と歌えないようにしてやる!」
この言葉はすなわち、リーズは自分のものだ、お前になど渡すものか、と。そういうことだろう。
シャルルがどんな歌を歌っていようが、ゲオルグには関係ない。その歌がパリの民衆の心を掴もうが、もはやそれさえも取るに足らぬことでしかない。
シャルルが、リーズの心を奪った。そのことだけが、ゲオルグを狂わせた。
最初は、人を殺すつもりで取り出した拳銃ではなかったのに。
だが、リーズの前にシャルルが立ったときに爆発した自分の狂気を、もうゲオルグには抑えることが不可能だった。
真面目すぎる、憐れな男。
踊り子風情の愛人さえ、遊びで終わらせることもできない。
本気で愛してしまった、生真面目で哀しい男。
そして、シャルルに向けて放たれた弾丸は。
シャルルを庇った、リーズの身体を貫いた。
カジノ・ド・パリの地下室を出て、それからおそらく、いや間違いなく、自らの命を絶った。
リーズ@アリスちゃんを手に掛けた、その拳銃で。
彼は何故、リーズに拳銃を向けたのだろうか。
本当に殺してやろうと思ったのか。自分に背を向けた女を。
そうではない、と思う。
それほどまでにリーズを愛しているのだと。殺してでも手に入れたいほど愛しているのだと。
その叫びだ。本気で殺そうとは、思っていなかったはずだ。
「私は君を愛していた、いや、今でも君を愛している。君の秘密を揉み消すことだってできるんだぞ」
ユダヤ人である、秘密を揉み消すと。ここまで言うのだ、ナチス親衛隊少佐が。たったひとりの女のために。この言葉の持つ意味は重い。
「君を愛している」と。
わなわなと震える唇から絞りだされる、苦悩に満ちた言葉。
ゲオルグは決して、声では叫ばない。それは自分の立場に対する分別なのか、男としてのギリギリのプライドなのか。
表面では抑えて、抑えて、だが彼の心は叫んでいる。大声で叫んでいる。
「君を愛している」「君を愛している」
しかし、涙を流しながらも、リーズはゲオルグの言葉を拒否する。
リーズは愛するシャルル@カチャと再会して、純粋なジジの心を取り戻した。もう、リーズには戻れない。
リーズであった自分を、ゲオルグと過ごした時間を、彼女は捨てるという。シャルルと共に。
「そうか……」
どんな思いで、ゲオルグはこう吐き出すのだろう。
哀しい、哀しい目をするゲオルグ。
そこに見えるのは、怒りですらなく、深い絶望だ。
その絶望の淵から、一縷の望みを賭けて、彼は拳銃を取り出す。
君を手に入れられないのなら、殺してでも……そう、殺してしまいたいぐらいに。
君を愛している。
同じ言葉を、今度は彼女に拳銃を向けてみせることで、もっと激しく叫んでいるだけの話だ。だが、いくら繰り返し叫んでも、リーズは戻ってはこない。それは、虚しく哀しいものでしかない。
拳銃を握り締めるゲオルグの手は、ガタガタと震えている。彼は、決してリーズを撃てはしない。憐れにも震えきったその指先が、引き金を引くなどできないことを、はっきりと証明している。
見せかけの、哀しい男の叫び。
だが、リーズの前にシャルルが立った。彼女を、庇おうとして。
その瞬間、ゲオルグの目の色が変わる。彼の中に僅かに残っていた理性が、一瞬にして飛ぶ。
あれは、狂人の目だ。
いつも身近にリーズを置きながら、自分が最後まで決して手に入れることができなかった彼女のほんとうの心。
それを、いとも簡単に持っていってしまった男、シャルル。
激しい嫉妬が、ゲオルグを狂わせる。
狂気に取り憑かれた彼は、明確な殺意を持って、銃口をシャルルに合わせる。
「お前のくだらない歌など、二度と歌えないようにしてやる!」
この言葉はすなわち、リーズは自分のものだ、お前になど渡すものか、と。そういうことだろう。
シャルルがどんな歌を歌っていようが、ゲオルグには関係ない。その歌がパリの民衆の心を掴もうが、もはやそれさえも取るに足らぬことでしかない。
シャルルが、リーズの心を奪った。そのことだけが、ゲオルグを狂わせた。
最初は、人を殺すつもりで取り出した拳銃ではなかったのに。
だが、リーズの前にシャルルが立ったときに爆発した自分の狂気を、もうゲオルグには抑えることが不可能だった。
真面目すぎる、憐れな男。
踊り子風情の愛人さえ、遊びで終わらせることもできない。
本気で愛してしまった、生真面目で哀しい男。
そして、シャルルに向けて放たれた弾丸は。
シャルルを庇った、リーズの身体を貫いた。
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