シャルル@カチャは、まんま宛て書きだろう。
というか、あの役はカチャ以外の人が演ったら、まるで別物になるはずだ。
シャルルは年を取らない。不穏な時代の中で、現実とはかけ離れたファンタジーを、1人生きている。
そんな時代にシャルルの歌があることが、どれだけ人々の希望だったんだろう。
皆の夢の象徴がシャルルであり、その歌だった。

カチャは、ファンタジーを体現できる人だから。つか、カチャがファンタジーだから(笑)。
彼の存在が、そのまま皆の夢となる。
カチャの資質が見事に生かされたシャルル像だったと思う。

ナウオンだったかな。録画しておいたのを公演終わってから見たのだが、その中でカチャが「1幕と2幕でかなり歳月が経っているので、それを出したい」というようなことを言っていて、ごめん噴いた(すみませんすみません)。10年ぐらい違うんだっけ?
あのね、ちーとも変わってませんからシャルル(笑)。
声を落ち着かせるとか、そういう部分はあったかもしれない。
だけど、歳は取っていない。身に纏う空気が、全然変わらない。

そして、それがカチャ最大の武器なのだ。

歳を取らない、大人にならないピーターパン。リアルに年齢を出す芝居ができることが、すなわち「タカラヅカ」にとって必要なのかというと、そうではないわけで。
そういう人も必要だけど、そうじゃない人も必要というか重要なのがタカラヅカ。

そんなシャルルが大人になるとき。それが、ジジ@アリスちゃんの最期。愛する人が逝こうとするそのとき。
カチャが意識してそれを演っていたのかは、分からない。いやそもそも2幕で年齢を出しているつもりなんだから、ここで敢えて年齢を上げてきているわけでは絶対ないはずだが。

ジジ「地中海の海の色は、貴方の目と同じ色をしているんでしょうね……」
シャルル「そうだよ……」

ジジはリーズになるときに、少女であることを捨てた。
そして、シャルルの腕の中で、最後に少女に戻った。
そんな彼女を見つめて言う「そうだよ」は、限りない優しさに満ちていて。

大人、だった。

愛する人の死を目の前にして、ピーターパンは少年であることに、別れを告げた。

この山場で、ぐっと男役としての包容力を出せるところも、カチャの持つ資質なんだろう。
それで、甘いのーー(うっとり)。死をというものでお互いが分け隔てられる瞬間のシャルルの目が、言葉が、甘いの。
大人なんだけど、それでもやはり彼はファンタジーなのだ。

ジジという役も、アリスちゃんならではのものだったと思う。
ただ、このヒロインは言ってることもやってることもかなりめちゃくちゃで、難しい役ではある。酷いんだもん(笑)。
でも、アリスちゃんの持つ説得力で、納得させられてしまう。

シャルルに恋をしたときの少女の眼差しのかわいらしさと、リーズになってからの大人の女性の貫禄、女優としての存在感の差異は、今のアリスちゃんだからこそ出せるのだと思う。

ゲオルグ@みーちゃんは嵌り役だったが、宛て書きと言ってもいいのかどうか。こういう物語にありがちな、類型的な役だから。
たしかに、みーちゃんって元々こういう系統の役が得意そうな役者ではある。敵役タイプだもん。かわいい少年より(無理っ)、明るい青年より、こっちでしょ。シャルルとか演るのは羞恥プレイだろうけど(笑)。

でも、そこにみーちゃんならではの色が出たからこそ、この役が魅力的になったんだと思う。

みーちゃんのゲオルグからいちばん感じたのは、正常な人間が狂気に取り憑かれることの恐ろしさだ。

最初からイっちゃってる系の芝居をする人っている。別に普通の役でも、常にイっちゃってる場合もある(笑)。
みーちゃんは真っ当なの。しごく真っ当。
時代背景でナチスは悪になってしまっているけど、別にゲオルグは悪役ではない。任務に忠実な、自分にも時代にも正義なわけで。
みーちゃんも「悪」には演じていない。ひたすら真っ直ぐに、感情を動かしている。

ただ、こんな時代だから、こんな立場だから。それを真っ直ぐに出せず抑えているだけで。抑えているのに、ゲオルグの真っ直ぐな感情は、真っ直ぐにこちらに響いてくる。
その真っ直ぐさが、みーちゃんの持つ資質なのだろう。

前に「陰陽なら陰」と書いたことがあるのだが、陰っていってもクールって意味合いとはちょっと違うんだよね。あったかいもの、みーちゃんの芝居は。
(じゃあなぜ陰って、をいそれは地味って話なのか?笑)
元々そういう芝居をする人だから、抑えても温度がある。内面の温度を感じさせながらも表面では抑えられるのは、それこそみーちゃんの技術なんだろうけど。

正常な人間が、たった1人の女によって、狂わされてゆく。
そして、時代の狂気に飲み込まれてゆく。

みーちゃんという人が真っ直ぐだから、ゲオルグという人は哀しい。
その真っ直ぐさが狂わされてゆくさまが、とてつもなく哀しい。

類型的な役、と言ったが、この役をこの色に創れることは、みーちゃんの大きな武器だろう。

もちろん、ナチスの軍服を着こなせる身長とスタイル、男役としての柄も、大きな資質だ。最初から爺ィ、もとい大人の男に見える外見の資質は、男役として強い。


ただ、ほんとシャルル演ったら羞恥プレイだと思うんだけどね(クドい)。

コメント