2幕は華やかなレビュー、リーズ@アリスちゃんの舞台からはじまる。
楽屋に戻ったリーズの元に、ミスタンゲット@美穂さんが尋ねてくる。
ミスタンゲットは、忠告に来たのだ。このままではお前が駄目になる、あの男の元へ行くのは止めろ、と。

あの男。
ナチス親衛隊少佐、ゲオルグ・シュタイネル@みーちゃんである。

だが、リーズはこの忠告を聞き入れない。
今のパリで彼女が生きていくには、ナチスの庇護が必要なのだ。

場面はこのままゲオルグの部屋に繋がる。ラジオからは、シャルル@カチャの歌が流れている。
「シャルル・トレネか。くだらない歌だ、私は好きになれないね」
その言葉を聞いて、リーズの顔色が変わる。
ミスタンゲットの言葉を拒否したリーズだが、シャルルにふたたび会ったことで、本心は揺れ動いているのだ。

ゲオルグとリーズ。
シャルルによって、2人の関係が崩れはじめてゆく。

「珍しいわね、ナチス親衛隊少佐が、踊り子風情に迎えを寄こすなんて」、挑むようにゲオルグに言うリーズ。
シャルルが帰ってくる前から、リーズはゲオルグにほんとうの心など見せたことはなかったのかもしれない。
そしてシャルルが帰ってきたことで、今度こそリーズは、その心をぴったりと閉じてしまった。

「周知の事実だ……」

ゲオルグの目は、暗い怒りに支配されている。抑えた口調の奥に、ドロドロとした嫉妬が渦巻いている。


この顔が、目が、ほんと恐かったんですよ、もう。

愛情が行き過ぎて、既に執着になってる。


「君をベルリンに連れていく」とか言い出すし。
ナチスの宣伝映画がどうとか言ってたけど、そんなのどーでもいいんだよね。
リーズをシャルルの傍から引き離して、自分の横にずっとずっと置いておきたいだけだよね。

逆ストーカー、つか拉致?

うわっ、この男、病んできたぞ、と。

愛情とは相手の気持ちを思いはかることであって、相手に執着することではない。しかし、今のゲオルグは、もうそれを理解することができなくなりつつある。


「君が舞台に立てるのは、誰のおかげだと思っているんだっ」

ベルリンには行かないと断固として言うリーズを、憎悪に燃える目で睨みつけ、言い放つゲオルグ。

遂に言ってしまった、この一言。
2人の関係は、興行界で生きていくゆえにリーズが選択したもので、そこに愛情はなかった。
ゲオルグだって、はじめはナチス親衛隊少佐として、パリの女王を自分のものにしたいだけだったのかもしれない。
お互い、それで納得していたはずだったのに。

ゲオルグは、本気で愛してしまった。

ゲオルグだけが、本気で愛してしまった。

相手の愛情を得られないとなると、最初の契約を持ち出す。権力を振りかざす。

その目に宿る蒼暗い炎、憎悪は、行き過ぎた愛情から生まれた感情なのだ。


すげー恐い……。


真っ当な人間が病んでいくさまって……ほんと恐いんですよ。
人間、狂いきってしまえれば、それも楽なのかもしれないけれど。

みーちゃんのゲオルグは、真っ直ぐなの。その真っ直ぐな心が、真っ直ぐなまま、真っ直ぐな方向に、どんどん病んでゆくわけ。

理性と狂気の狭間を揺れ動く男の、病み。病んでいく過程。



それは、どれだけ苦しいものだったんだろう。

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