いや、今回は別に十輝いりすがそう言ったわけではない。

ただ、十輝いりす自身が「事件」だった。それだけのことである。



『誰がために鐘は鳴る』東宝新人公演。
開演を待つ劇場に、宙組の錚々たる上級生たちが着席した。

彼女たちは皆、静かに開演を待……っているわけはない。
相手はジェンヌだ、そんなわけはない、が。
が。
中でも。

まさこっ!

そわそわしないのっ!!(笑)

まさこちゃんはあきらかに、ものすごくそわそわしている。
その目はキラキラと輝き。そのお口はぽかんと開き(あ、それはいつもかしら?)(失礼な)

そう。まさこちゃんの胸は。
いまからはじまる目の前の舞台への期待で。

あきらかに、ものすごくわくわくしているしている。


かああああああいいっ!かああああああいいいいいいっっ!!



舞台の幕が下りた。

これからカーテンコールである。

あ。うう。はあああ。うん、よしっ。あああ。ふう。はああ。ああああ。うん、キリリっ。

十輝いりすは、何度も落ち着きなくその大きな身体を伸び縮みさせ、若干緊張した面持ちで、ふたたび緞帳が上がるときを待った。



まさこおおおっ!

キミが挨拶するわけじゃないんだからっ。

落ち着きなさいっ!まーさーこおおおーーーっ!(笑)



結論。

十輝いりすは、この世界にしあわせを運ぶ、天使である。

ちょっとそわそわした、天使。

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