ニューヨークにいるジョージ・ウルマン@みーちゃんの元に、ある日1本の電話が掛かってくる。

「ん、『俺だよ』?!はあ?一体、誰?
失敬な奴だな、俺に『俺だよ』なんて言えるのはだなっ、ルドルフ・ヴァレンチノぐらいのもの、、、……。………ルディーか?」

ルディー@ゆうひちゃん。映画界の大スター、ルドルフ・ヴァレンチノ。
4年振りに聞く、懐かしい声。
ルディーは、かつてジョージがハリウッドでメトロ映画の宣伝課長だった頃の仕事仲間であり、親友だった。
だが、ヴァレンチノがパラマウント映画に移籍を決めたことで、担当のジョージはメトロ映画をクビになってしまった。

親友だと思っていた男に、ジョージは裏切られた……のだろうか。

いや、ジョージのほうは最初から「裏切られた」とは、微塵も考えもしなかったのだと思う。
「いいんだ、いいんだよ、あのときはそうするしかなかったんだ……」
再会したルディーに向かってジョージが言う言葉だが、ジョージはそれを口先だけで言っているわけでも、4年経った今だから言っているわけでもなく。

「あのとき」も。ジョージは同じことを思っていたはずだ。今はそうするしかない、と。
ルディーを誰よりも理解していたから。
その苦悩も葛藤も、誰よりも理解していたから。

ルディーの活躍が、彼の喜びだった。
そんなルディーを支えることが、また彼の喜びだった。
その役目を奪われた悲しみはあっても、それが今のルディーが選ばざるをえない道だということを、彼は誰よりも理解していた。
だから、それを尊重した。「あのとき」も。
たとえ自分がクビになっても、ルディーの行く道の幸せを祈って、静かにハリウッドを離れたのだ。それだけに過ぎない。

ジョージは、とにかく第一にルディーのことを、人のことを思いやれる男なのだと思う。
自分のことよりも、まず相手のことを。断固として、相手のことを。
相手の気持ちを思いやることが、自分自身の喜びでもあるのだ。
だから、その優しさは揺るがない。断じて揺るがない。
単なる人が好いだけのヤワな優しさなどでは決してない。ジョージの優しさの奥底にあるのは、それぐらい強靭な確固たるものなのだ。

強くて、かっこいい。

ただの天然じゃないのよ(笑)。

そして、ジョージには自負があった。
いちばんルディーのことを理解しているのは、やはり自分だ、と。
この再会は、偶然ではなく必然である。
だから再会のとき、彼はあんなにもすんなりとルディーを受け入れたのだ。

ルディーと離れていた4年間も、ジョージはずっとルディーのことを気に掛け続けていたのだろう。
ハリウッドの話を……ルディーをプロデュースしていた妻ナターシャ@カイちゃんとの離婚も、どうやらルディーの仕事が行き詰っているらしいことも、ニューヨークでじりじりしながら聞いていたはずだ。

ジョージ自身が、もっとも待ち望んでいたかもしれない、ルディーからの電話。

ルディーには必ず再び自分が必要になる日が来ると、いつも心のどこかでそれを信じていたジョージにとって、その電話は何よりも嬉しいものだったに違いない。

ニューヨークで4年振りに、ジョージはルディーと再会を果たすことになった。
待ち合わせの場所は、クラブ21。


ここのテーブルでルディーを待つジョージの顔が。
優しい。限りなく優しい。

胸に溢れる再会の喜び、その感に堪えない表情でルディーを待つ、ジョージの甘い優しさが好きだった。情愛に満ちて輝く瞳が好きだった。


あいつを見たら、どんな顔をしたらいいんだろう。
4年振りの再会……俺を裏切ったと思って、あいつは気にやんでいるのではないだろうか。
でも、俺はいつだってお前のことを大切に思っていた。
4年前と変わらず大切に思っていた。

だから、さりげなく。

「やあ!」


久しぶり、会いたかった!と抱きつくわけでもなく、もちろん、あのときは随分なことをと恨みごとを言ってみたりするわけなどなく。
そう、4年振りなんかじゃない。昨日も一昨日も会っていた友のように。
一言、「やあ!」と。


って、ジョージの中の人いわく、さりげなく「やあ!」を言うために、再会の前にジョージはずっと「やあ!」の練習を繰り返していたらしい。
ジョージの中の人の……これも半分ネタなのかな?(笑)

ひたすら、さりげなく。
鏡の前で(か知らんけど)。
「やあ!」「やあ!」「やあ!」と軽く右手をあげて。

「やあ!(さりげない笑顔)」


一心不乱に「やあ!」の自主練。(ジジュ…レン?!)(ジシュレンシューのことだよ!)

ええ、ポイントは、あくまでも「さりげなく」。
でも、その声色とは裏腹に、抑えきれなくてデレっデレな顔になっちゃってるんだけどね、実際にルディーを前にしたら(笑)。

ほんとうに嬉しくて嬉しくてたまらなかったんだねええ。


そんなジョージが、とてつもなくかわいいです(煮)。


ジョージにはもう一人、4年間ずっと大切に思っている人がいた。
その昔は片思いの相手で(笑)、だが、一緒に“ルドルフ・ヴァレンチノ”を創りあげた大切な仲間たち……ルディーその人と、自分と、そして自分と同じぐらい、いや自分以上にルディーを理解していると彼が認める唯一の人……脚本家のジューン・マシス@すみ花ちゃん。

この三人の絆を信じ、誰よりも大切に思っていたのは、実はジョージ自身だったのかも……しれないね。

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