ほうしょうだいは、反則技の得意な男(役)である。
舞台という縛りがあるのをいいことに、かわいい女子を見つけ出すと、普通では考えられないようなセクシャル・ハラスメントを堂々と繰り広げる。
いや、仮にそれがほうしょうだいのデフォだとしよう。
だがシャツの襟元を緩めるまではアリだとしても、誰がズボンのベルトに手をかけてそれを下ろしかけるというのだ。
こんな反則はなかなか無いって。

脚本に一言、ほうしょうだいの台詞があったとしよう。彼は連呼という手段を使って、一言を無限に延ばす。初日と千秋楽では、その台詞量が違う。そして叫びは雄たけびに変わり、落涙は慟哭に変わる。
ついでに当初の演出が伏せ顔だったりすると、いつの間にかそれは天を仰ぐ、に変わっている。
こんな反則はなかなか無いって。

彼の反則は、もちろん客席に対しても行われる。
「俺だけを見ろーー!」
普通これは、相手が「俺だけを見ている」ことを前提にして叫ぶ言葉であるはずだ。
ほうしょうだいは治外法権である。そんなことは意にも介さない。
「俺を見ていない人」にもグイグイ「俺だけを見ろ!」と迫ってゆく。そんな彼が「俺を見ている人」を見逃すはずはない。俺だけ、ではない。一瞬でも「俺」を見たものに対しては、その攻撃の手を緩めない。
端から狙い撃ち。ばちばちばちんばちんばちばちばちんばちんばちばち。ほうしょうだいのウィンク攻撃は、とどまるところを知らない。
彼が銀橋を渡り終えた客席には、累累と死屍が横たわっている。それが赤面死か笑死かは、分からないけど(え)。


さて。ここ東宝。クラシコ・ガイ最終戦。

12月20日。最後の休演日を終え、舞台は最終週に突入した。
とても気合いの入った良い舞台だと、この日わたしは感じた。ほうしょうだいの話ではなく、公演全体の話で。
今の宙組……卒業の6人がいて、組替でまず最初に出る2人がいて。今の宙組は、今しかない。
そこで見せられる最高のものを!といった気合いに満ちた、熱く力強い舞台だったと思う。

ほうしょうだいも、いつも以上にほうしょうだいだった。某カメラが入っていたせいもあってか(笑)、彼からは噴煙が立ちのぼり、のべつ幕なしにウィンクを飛ばしまくっていた。

まさかの反則技が出るまでは。

パレードのとき。
静かだった。ほうしょうだいが、ほうしょうだいなのに、静かだった。
銀橋を渡るときも、ほうしょうだいの気配がしない。だって、静かなんだから。
そんな馬鹿な!

って、大ちゃんの顔を見たら。

今にも溢れんばかりに、目にいっぱい涙を浮かべていた。

それがこぼれ落ちないよう必死に我慢して、むくれた口をしていた。
だけどそんな状態でも彼は、こわばるしかできない笑顔を懸命に作ろうとしていた。

大ちゃん、泣いてる……。

まさかこんなところで急に、だいたい千秋楽でもないのに(笑)、泣き出されるとは思ってもみなかった。

大ちゃん……そんな顔されたらもう、こっちが我慢できないよ。

大ちゃん……。

こんな酷い反則は勘弁して欲しい。

わたし、千秋楽まで身が持ちません……。


大ちゃんという人が、心から愛おしいと思った。
心から。


大階段オラオラ祭り、パレード……。
今回のショーでは、殆どはじめてと言っていいぐらい、88期三馬鹿が並ぶ場面が多い。
最終週見納めの並びに、こっちも途中から息も絶え絶えになってるというのに(笑)。
この反則技には、息の根を止められた。わたしもうやばい。

大ちゃんのばあか!大好きだよ……。


この先の道は違えども、宙88期が永遠の「絆」を胸に、それぞれの場所で輝き続けますよう。

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