こいすけ、じゃありませんよ!(くどいよ)
りすけ、です^^
多少配慮したつもりだけど、若干ネタバレしますのでご注意ください。



近松門左衛門@はっちさんのニ男、杉森鯉助@みーちゃん。
自身も父のあとを継ぐ浄瑠璃作家を目指しているが、ろくな本が書けない。
父の名声に押しつぶされそうになり、酒と女に溺れる自堕落な日々をすごしている。
「浄瑠璃なんて簡単なもんや、ちょいちょいと書けばいいんやろ」などと嘯いてみせるが、彼はこのまま本を書くことはできないだろう。
そして、彼は本質的な部分で、そのことを理解している。
だから、苦しい。

彼に、作家としての才能があったのかどうかは知らない。
(史実でもたいした作品は残していないようだが、この際それはどうでもいい)

彼は、書けない。

本気で生きられない人だから。


本気で生きた人がいる。嘉平次@みわさん。おさが@みりおんちゃん。
本気で生きて、だから死んだ。本気で生きるために、死を選んだ。
本気で生きた人がいる。清吉@みつるくん。小弁@べーちゃん。
本気で生きて、だから生き抜いた。本気で生きるために、生き抜くことを選んだ。

鯉助はおそらく、本気では生きられない人だ。


心に闇を抱えた人間は、その闇を埋めるためになにかを求める。
酒であったり、異性であったり、賭け事であったり、薬であったり。
狂ったように、それに走る。というか、狂ってるんだ。

自分がいちばん分かっているはずだ。今やっていることが、どんなに虚しいかって。
だけど、止まることはできない。止められない。

それが闇であり、病みなのだろう。


だが、その闇……心にぽっかりと開いた穴は、どんなことをしても決して埋まることはない。

逃げているだけだから。
自分の闇から、目を逸らしているだけだから。

本気でなにかと向き合えない、そういう人だから。

一度逃げたら、もう逃げ続けるしか道はない。

世の中に、怯えている。怯えているからこそ、あんな舐めた(ふうの)口を利く。
違うんだ。ほんとうは、鯉助は自分の闇と、世の中と、本気で向き合うことが、ただただ……恐い。

しかし、逃げているうちは、その闇は決して埋まることなどない。


本気になれる人だったら、「事件」を引き起こした時点で、本気の自分に生まれ変われるだろう。

ここまでのことをやらかしても、変わらない。
いや、変わらないのではなく、やはり彼は変われない人なのだ。


世に名高い、近松の息子。近松の二代目。
そこに彼の闇がある……ようでいて、それはたまたまの話だろう。

同じ。
どこの生まれでも、なにをやっても、こういう人は同じ。

本なんて、書けるはずもない。いや、もしかしたら才能は、「本を書く」才能は、あったのかもしれない。

でも、ほんとうの意味での「作家の才能」って「本気で書ける」ことなんじゃないだろうか。小手先で文章を書ける、書けないではなく。

そのことに本気で取り組める、才能。
本気でなにかを、死ぬ気でなにかを、やれる才能。

仮に今の時代でも、どんな職業でも、同じこと。
本気になれる人が、勝つ。
そうなれないんだから、この人はきっとダメなままだと思うんだ。

そしてそれを自分で分かっているから、鯉助は苦しいんだと思うの。

哀しい人。ほんとうに哀しい、心の弱い人。

というか。
苦しいんですが。わたしが←

己の闇を見合わせてしまうよね、この役に視点を合わせて観たら。

苦しい、です。
観るたびに、消耗する。
きゃああ!ってなれるようなかっこいい、女子脳を満たしてくれる役(笑)だったら、どんなにか楽だっただろうね、わたしが(笑)。


一幕で、鯉助のあまりの性格の悪さ(笑)に引いた(引いた、言うな)んですよ(笑)。
ほんとうは小心者で常におどおどしているくせに、いるからこそ、つまらない虚勢ばかり張って。
器、ちっちゃ!(笑)
弱い人間ほど大口を叩く、その見本みたいな。
ほんとうは恐いんだよ。世の中が恐いんだよ。
世の中に怯えきってるからこそ、虚勢を張ることでしか自分を支えられないのだろう。
あげく子どもみたいな嘘をついて、事件を巻き起こして。
うわあイジワル!
またイジワルな顔が巧すぎてもう(苦笑)。あのイジワルさはアテ書きなんですか?(嘘)


ほんと「子どものイジワル」レベルのちっちゃい話なんだけど、結果がね。もう。とんでもないことになってしまった。


ここで改心するかな?と思った。
ニ幕。しやしない(笑)。
えっ開き直ってる←

堪えている。自分の巻き起こした事件が。父に指摘されたことが。ものすごく堪えている。そしてそのことに、また怯えている。

苦しくて、つらくて、だから鯉助が次にやったことは、開き直ってますます現実から目を逸らす、というね。

人間、そのほうが楽だもの。
自分の闇と向き合うって、しんどい作業だもの。


ああ、そこまで病んでるんだな、この人の心、って。
自分がいちばん傷ついて。自分自身を追い詰めて。
だけど、変われない。

ほんとうは変わりたかったんだと思うの……だからすごく苦しかったんじゃないかと思うの……。

そんな鯉助がもう哀しくて哀しくてしゃあない。


あとは、お蝶@まいこちゃんかな。
鯉助を、闇から救ってくれるものがあるのだとしたら。
お蝶の、真心。


だけどその救いも、あくまでも休息でしかなくて、根本的に彼を変えることはできないと思う。

変わらないんじゃない、変われないんだもの、この人。


それでも鯉助の闇が、少しでも救われればいい、と思う。

彼の心が穏やかに休まる日が来ればいい、と思う。



子どものままごとのほうが、よほど世の中の真実に迫っている。


虚しく響く、乾いた鯉助の高笑い。

彼の抱える深く暗い闇が、哀しい。

鯉助という人は、とてつもなく哀しくて、苦しい。


千秋楽まで持つかしら。わたしが←

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